オブザーバビリティを高める3要素「収集・分析・可視化」
について解説

2023年11月07日
クラウドネイティブが一般化するにつれてシステムの構成が複雑化し、管理対象が増えたり頻繁にトラブルに見舞われたりする可能性も高まっています。そうした中で安定的なシステムの運用管理を実現するためには、オブザーバビリティを高めることが不可欠です。本記事では、オブザーバビリティを高めるうえで必要な要素やメリットなどを解説します。

オブザーバビリティとは

 

オブザーバビリティ(Observability)とは、システム内部の状態を分析し、どのように動作しているかを出力状況から推測する能力のことです。システムの運用に関する問題を特定し、迅速な対応策・解決策を見出す際に重要な役割を果たします。ITシステムの構成が複雑化し、システムの内部把握が難しくなってきたことから、それを可視化できるオブザーバビリティの重要性が増しています。

 

オブザーバビリティの基礎知識については以下の記事で詳しく解説しています。

 

オブザーバビリティのニーズが増加した背景

オブザーバビリティのニーズが増加している背景としては、以下の2つが挙げられます。

アプリケーション構成のマイクロサービス化

クラウドネイティブが普及したことで、システム構成はかつてないほど複雑化してきました。

クラウド以前のシステムはシンプルな構成で稼働要素が少なかった一方、クラウドネイティブではアプリケーションの構成が複数のコンポーネントに分離されて設計・実装されており、それら機能やサービスが相互依存的に組み合わさり連携して動作します。これを「マイクロサービス」と呼びます。

マイクロサービス化されたアプリケーションは問題発生時には各機能やサービスの動作をくまなく追いかける必要がありますが、その原因特定は容易ではありません。そこで障害の原因特定や解決策の提示をリアルタイムで行えるオブザーバビリティのニーズが増しています。

DevOpsの登場

開発(Development)と運用(Operations)が相互に協力する開発手法である、DevOpsの登場も背景の1つです。DevOpsの普及により、開発者が運用の領域にも関与する必要性が生まれ、エラーの発生状況やパフォーマンスの維持状況など、アプリケーションの稼働状況をさまざまな視点から監視することが欠かせなくなりました。こうしたことからオブザーバビリティの重要性が増しています。

 

次章では、オブザーバビリティを高めるために必要な3要素を説明します。

オブザーバビリティを高める3要素

オブザーバビリティを高める3要素

 

オブザーバビリティを高めるためには、「データ収集」、「データ分析」、「データの可視化」と大きく分けて3つの要素が必要となります。

データ収集

システムの稼働状況や問題を把握するために、まずは監視対象のシステムで生成されるさまざまなデータを収集することが重要です。膨大なデータのうち、内部把握に必要となるデータは「シグナル」と呼ばれ、後述の「メトリクス」「ログ」「トレース」といった情報(シグナル)の収集が不可欠となります。

データ分析

収集したデータは、パフォーマンスの問題やエラーなどを分析するために使用されます。具体的にはトラブルシューティングやパフォーマンス最適化(ボトルネックや無駄なリソースの発見など)、セキュリティ監視といった分析の目的があります。

各種のデータの意味を把握し、データの構成要素の関係性を捉えることが重要です。

データの可視化

データの意味するところを運用者が把握しやすくなるよう、可視化することも大切です。可視化を通じて問題解決や正確な情報理解が可能となります。ダッシュボード機能のあるツールを導入することで、グラフやチャートなどで表示されるため視覚的・直感的なデータの把握ができるようになり、迅速な異常の検知や問題の識別に役立ちます。

運用しているシステムのネットワーク構成を可視化するネットワークトポロジーの作成も、データの可視化には効果的です。

 

このうちデータ収集においては、テレメトリーデータが重要になります。
次章では、可観測性の概念を実現するために収集する必要のあるテレメトリーデータ要素を説明します。

可観測性の概念を実現するために収集する必要のあるデータ要素

可観測性の概念を実現するために収集する必要のあるデータ要素

 

オブザーバビリティを高めるにあたっては、テレメトリーデータが重要となります。テレメトリーデータは、アプリケーションの品質向上やパフォーマンス改善のために収集・利用されるデータのことです。リアルタイムで収集され即座に分析されるため、自社サービスの安定的な運用や改善を図りたい企業にとって不可欠のものであるといえます。

テレメトリーデータのうち、メトリクス・ログ・トレースが「オブザーバビリティの3つの柱」と呼ばれており、データ収集に重要な要素です。

メトリクス

メトリクスとは、一定の期間内でシステムの状態やパフォーマンスに関する情報を取得し、数量化したデータ(測定値)を管理用途に加工したデータのことです。CPU使用率、メモリ使用量、リクエストの処理速度、レイテンシなどシステム内部のあらゆる情報が記録されます。

システムの規模にかかわらず稼働状況を監視するために活用されます。

ログ

ログは、システムの動作や処理結果を示すテキストベースのデータのことです。データの送受信の日時や内容など個々のイベント情報が記録されており、問題発生時にはログを参照することで原因究明や診断につなげていきます。

ログの収集対象はOSやミドルウェア、アプリケーションなどです。

トレース

トレースとは、複数のサービスコンポーネントを横断したリクエストのフローを可視化し、システム内における特定のリクエストやトランザクションの動作状況を示すデータのことです。

分散システムやマイクロサービスアーキテクチャ内での処理経路をトレースして追うことで、問題の発生箇所を特定できる可能性が高まります。

オブザーバビリティを高めることで得られるメリット

オブザーバビリティを高めることで、複雑なシステムの内部状況をリアルタイムに把握でき、問題発生時の原因特定や対応策、解決策の提示をスムーズかつ容易に行えるようになります。その際には追加のテストやコーディングを行う必要もありません。

これにより、システムの安定運用やサービスレベルの維持を実現でき、ユーザーの満足度向上にもつながります。

 

オブザーバビリティは、これまで手作業で行っていた作業を自動化・効率化するSRE(Site Reliability Engineering)とも親和性が高いメリットがあります。SREを導入し、問題の原因特定やその改善活動(インフラ改修や開発チームへの改善の要求など)をいち早く行うオブザーバビリティ的な仕組みを構築・提供することで、システムの安定性・効率性向上や運用担当の負担軽減などに寄与します。

 

オブザーバビリティを高めることのメリットについては以下の記事でも解説しています。

 

オブザーバビリティの導入は、Sproutlyにご相談ください

オブザーバビリティを高めることは、アプリケーション構成のマイクロサービス化などによりシステムの構成が複雑化する現在、ますます必要になってきています。

しかし、その導入には専門の知識や経験が必要であるため、オブザーバビリティ導入支援の実績のある企業に依頼することがおすすめです。

Sproutlyはオブザーバビリティ導入のための専門知識や経験を持っており、アプリケーションの安定稼働と最適な状態を維持管理するためのサービス提供や最適なご提案が可能です。

 

オブザーバビリティの導入にご関心のある方は下記よりお問い合わせください。

 

このコラムを書いたライター

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