SPA(シングルページアプリケーション)とは?実装におけるメリット・デメリットについて解説

2024年03月27日
WebページのUI/UX向上や幅広いWeb表現を実現する手段として、SPA(Single Page Application)が注目されています。SPAは「単一ページのアプリケーション」という意味ですが、具体的に何を指し、どのようなメリットがあるのか分からない方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、SPAの概要やメリット・デメリットを中心に解説します。

SPA(シングルページアプリケーション)とは

SPAとは、Webアプリケーションの構成方法の一種であり、”Single Page Application”(シングルページアプリケーション)の略です。SPAを活用すると、ページを再度読み込むことなく画面の遷移やコンテンツの切り替わりが行われるため、動作が軽快になりUI/UX向上につながります。

 

SPAを使わない通常のWebページでは、リンクやボタンをクリックしたり何らかの操作をしたりするたびに、サーバーにページ読み込みがリクエストされ、ブラウザがWebページ全体を再読み込みする形が一般的です。一方で、SPAでは最初にJavaScriptやHTML、CSSを一度だけダウンロードし、それ以降はサーバーから必要なデータだけを取得し、JavaScriptを使ってクライアント側でHTMLを生成します。ページ内で変化させる必要のない箇所はそのままにしておき、変更が必要な部分のみ更新されるため、サーバーとやり取りするデータ量が大きく減少し、ページの読み込み時間の短縮や全体のパフォーマンス向上に寄与します。

 

たとえば、Googleマップでは起動した時点でページ全体が読み込まれ、それ以降は必要な箇所のみ更新が行われ地図や施設などの情報が表示されますが、これはSPAによって実現しています。SPAを実装していることで、Googleマップではスムーズな画面の読み込みや表示が可能となっているのです。

 

代表的なSPAのフレームワークには、Angular、React、Vue.jsなどがあります。これらのフレームワークを使用することで、SPAの開発が容易になり、Webアプリの構築を効率化できます。

SPAが実装されている代表的なアプリケーション

SPAが採用されている主なアプリやサービスとしては、前述の「Googleマップ」のほか、「Facebookメッセンジャー」や「X(旧Twitter)」、「Gmail」などがあります。Gmailではサーバーから非同期で必要な情報を取得するため、受信メールの閲覧や詳細の表示、メールの新規作成、検索などをページ遷移することなく同一ページ内で行うことができます。

 

そのほかにも、チャットツールの「Slack」や、音楽ストリーミングサービスの「Spotify」、ソースコード管理プラットフォームの「GitHub」など、多様な分野における代表的なサービスでSPAは採用されています。

SPA実装におけるメリット

SPAを実装することで、以下のようにさまざまなメリットを得られます。

高度で幅広いWeb表現が可能になる

SPAを実装しているWebサービスやアプリでは、操作や入力の都度1つのページすべての情報を更新するのではなく、必要な差分のデータのみを読み込むため、ブラウザの挙動に左右されない幅広いUIの設計が可能となります。

一般的なWebページでは、ローディングやページ遷移はブラウザ側によって制限されているため、オリジナルの表現を行うことが難しい課題がありました。しかし、SPAではこれらをクライアント側で独自に開発できるため、ブラウザによる制限を受けることなく幅広いWeb表現を実現でき、動的なコンテンツのロードなどもスムーズに行えます。また、Angular、React、Vue.jsといった多様なJavaScriptのフレームワークを活用することで、独自性のあるWeb表現を比較的容易に開発できます。

動作性の向上

通常、Webページでは一度操作を行うたびにページ全体を読み込む必要があるため、通信量が膨大になり、読み込みや表示の遅延が起こりやすい点がネックでした。遅延が発生すると、コンバージョン率が低下し検索エンジンからも評価されにくくなります。高速通信環境が普及したことでスムーズに画面が表示されることが当たり前となった現在、このような遅延がSEOに与える影響は大きなものとなっています。

 

SPAを実装することにより、必要最小限の情報のみが読み込まれるため、ページの遷移や表示にかかる時間を短縮でき、データの通信量が最小化されることで動作性が大きく向上する効果があります。ユーザーがページ遷移で待たされることがなくなるので、上記のようなSEO上の課題も解消できます。

ネイティブアプリの代用

SPAを実装したWebサービスは、ページ読み込みの際の負荷の小ささなどから、モバイルアプリと同等の操作性やUXを実現できます。オフラインでの操作やホーム画面からの起動、プッシュ通知など、ネイティブアプリならではの機能をSPAを使って実装することも可能です。

さらに、ネイティブアプリはアプリストアでの審査に時間や手間がかかる点がネックですが、SPAであればこうした審査の工程が不要となるため、短い期間と少ない工数でネイティブアプリのメリットを持ったWebアプリを開発・提供できます。

UXの向上

SPAではページの再読み込みが最小限に抑えられるため、スムーズな操作体験を提供でき、UXを大幅に向上させることができます。

たとえば、SPAを実装した音楽ストリーミングサービスでは、ページの情報を更新した際に音楽を一時停止させることがなく、ユーザーにストレスを与えません。また「Facebookメッセンジャー」では、SPAによりコンテンツの切り替えをスムーズに行えるため、新たなメッセージを閲覧しようとする際にページを移動することなく確認できます。

このように、SPAの実装により、多くのサービスにおいてUXを向上させる機能が実現しています。

SPA実装におけるデメリット

一方で、SPAの実装にはデメリットもあり、注意が必要です。

初期ローディング時間の増加

SPAでは、最初に必要なJavaScript、CSS、およびHTMLをダウンロードする必要があります。この場合、初回のアクセスで一度にページ全体の情報を読み込むため、データ量が多くなり初回のローディングに時間がかかります。

特に、大規模なアプリケーションや複雑なUIを持つWebサービスアプリの場合、初回のローディングにより多くの時間が必要です。

実装コストが大きい

SPAを実装する際には、これまでブラウザで行っていた処理を開発する必要があるため、比較的多くの開発コストを要します。たとえば、ブラウザの「戻る」/「進む」の履歴管理、ログイン状態の管理方法、ローディング画面の表示といった処理の開発にコストをかけなければなりません。

また、コストを抑えようとして機能を抑えようとすると操作性の低下を招き、SPAの長所であるUX向上を実現できなくなる、といった事態にもなりかねません。さらに、後述のように高品質なアプリの開発を担える優秀な人材は数が少なく、人材獲得競争が激しいために採用活動を含めた人的コストがかさむ課題もあります。

開発者が少ない

SPAは比較的新しい技術であるため、通常のWebサービス開発を担うエンジニアよりも絶対数が少ない課題もあります。

従来型のWebページ開発であれば、HTMLとJavaScript、CSSの知識があれば十分です。しかし、SPAを実装するためにはこれらに加え、Vue.jsやReactなどJavaScript周りのフレームワークやライブラリに関する知識が必要であり、大規模なコードを書けるスキルも求められます。

そのため、対応できるエンジニアが少なく、人材の確保に多くの労力を割く可能性があります。

下層コンテンツを無くす場合はSEOに悪影響を与える可能性がある

一部の検索エンジンのクローラーでは、JavaScriptを完全に解析できず、SEOに悪影響を与える可能性があります。SPAにより開発されたページは、基本的に単一のURL/URIで提供されており、外部からそれぞれのコンテンツの状態を固有のURLにより識別できるわけではありません。コンテンツページが最初から存在していない状態とみなされるために、クローラーが適切にコンテンツを解釈できない可能性があるということです。この場合、検索結果として適切に表示されず、SEOで不利になることが考えられます。

 

とはいえ、現代のSPAフレームワークでは、SSR(サーバーサイドレンダリング)の技術を用いて、クローラーがSPAのコンテンツを適切に解析することが可能となっています。SSRとはWebアプリのアーキテクチャの一種であり、サーバー側でHTMLを生成し、レンダリングされたページをクライアントに返す方法です。これにより、クローラーはサーバーが生成したHTMLを直接解析できるため、検索エンジンのクロールとインデックスが容易になるメリットがあります。

SPAを実装するにはCloudがおすすめ

SPAを実装する場合には、Cloudの活用がおすすめです。たとえばSPAをフロントに置き、バックエンドの API サーバーとしてCloud Runを使用する方法が挙げられます。なお、Cloud Runは、コンテナ化されたアプリケーションをサーバーレスで実行するためのマネージドサービスです。

 

手順の一例として、まずはSPAをDockerコンテナにパッケージ化します。Dockerfileを使用して、SPAをコンテナイメージにビルドし、静的ファイルを含めます。次にコンテナイメージをCloud Runにデプロイします。Google Cloud Consoleを使用してコンテナイメージを指定し、デプロイを実行します。必要に応じて、Google Cloud Runの環境設定を構成すると良いでしょう。こうすることでSPAをGoogle Cloud Runにデプロイし、サーバーレス環境で実行することができます。

SPA実装はSproutlyにご相談ください

ここまでご紹介したように、SPA実装は利便性が高くUXの向上にも効果的ですが、開発者が少なく自社で対応することが難しいケースが少なくありません。そのような場合には、ベンターを利用するのがおすすめです。

Sproutlyは、Googleのサービスパートナーとして、顧客企業に対し Google Cloud Platform 活用に向けたコンサルティング・導入・運用サービスを提供しています。

お客様個別の要件に応えながらアプリケーション基盤のクラウド移行を支援していますので、SPA実装についてお悩みがございましたらお気軽にお問合せください。

 

このコラムを書いたライター

SREベース運営局
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