データ分析基盤を構築するには?
基礎知識から構築する際の流れ、ポイントを解説
データ分析基盤とは
データ分析基盤とは、企業における多種多様なデータに関する収集・蓄積・加工・分析などの一連の作業を行う基盤のことです。
昨今、この基盤の構築を行う企業が増加しています。
データ分析基盤の構築が必要な背景
データ分析基盤の構築の必要性が高まっている背景として挙げられるのが、IT発展による企業が持つデータ量が膨大になっていることです。例えば、IoTやスマートフォンの普及に伴い、あらゆるものや場面において、さまざまなデータの収集が可能になっています。そのデータ量は膨大かつ、さまざまな構造データがあるビッグデータとも言われています。
企業ではDXなどに向け、ビッグデータの分析・活用などが求められている状況ですが、従来のExcel(エクセル)といった表計算ツールでのデータ分析には限界があります。また、手作業での分析になるため非効率です。そのため、データ分析までを一貫して行うデータ分析基盤の構築が求められています。
IT市場が急成長している一方で、システム導入から長い時間が経過した「レガシーシステム」を使い続けている企業は少なくありません。データ分析基盤を構築する上で、レガシーシステムが足かせになる可能性が高く、脱却することが求められるケースがあります。
以下コラムでは、レガシーシステムにより生じる問題や、脱却のための方法を詳しく解説しています。
組織における問題点と脱却する方法について解説!
データ分析基盤を構築するデータ基盤の4層構造
データ分析基盤を構築するためには、以下4つの要素を踏まえることが重要です。 以降では、それぞれの詳細を解説します。
1:データの収集
1つ目の要素は、データ収集です。
システムやwebサービス、IoT機器といったデータソースと連携し、データの収集が行えることが重要となります。具体的には、工場に設置された機器のIoTセンサーから情報を取得する、システムからエクスポートされたCSVファイル から情報を取得するといったイメージです。
2:データの蓄積
2つ目の要素は、データ蓄積です。
データソースから収集したデータは生データと呼ばれ、一度この未加工のまま状態で「データレイク」に保存していきます。データレイクとは、システムやデータベースから収集したデータをそのまま保管する役割をもつリポジトリのことです。
3:データの加工
3つ目の要素は、データ加工です。
先ほど収集・蓄積した生データは分析に扱えるデータではありません。そのため、分析しやすい形にするために、整形、加工、クレンジングを行います。
具体的には、まず格納しやすくするための分類化を行い、「データウェアハウス」に保管します。その後、分析のために細かく、整理、分類、加工し、特定の用途が決まった「データマート」内に格納されます。
4:データの分析・可視化
データウェアハウス、データマートに保管された、加工済みのデータを分析していきます。
保管されたデータは、あくまでも用途ごとに決まった保管がされているだけであり、人が意思決定する際の材料として使いやすいものではありません。そのため、最終工程としてデータはBIツールなどを利用しグラフやチャートなどに分析・可視化します。
その他、データレイクとデータウェアの違いやデータマートとの関係性など、以下記事で解説しています。あわせてご覧ください。
メリット・デメリット、その役割などを解説
データ分析基盤構築の3つのメリット
ここでは、データ分析基盤を構築するメリットをご紹介します。
メリット①:データ分析に向けた環境整備が可能
従来、データ分析は、Excelシートなどで行っているため複雑かつ非効率な作業でした。また適切なデータ選出の難しさなどから専門的な知識が必要なため、属人的な作業となっていました。
そのような状況においてデータ分析基盤を構築すれば、データ分析を効率良く行える環境が整い、専門知識がない人でも簡単に分析を行うことができます。
メリット②:データの一元管理が可能
従来、企業のデータは部署ごとに独自のシステムで管理・保管していることが多く、扱いたいデータが難しい、といった管理上の課題がありました。
基盤を構築することで、さまざまなサイトやアプリケーションで収集したデータを一元管理し、分析などの必要がある際にすぐに取り出すことができます。
メリット③:スムーズかつ高度なデータ分析が可能
一元管理が行えているため、データ分析の際の集計作業が削減できます。 従来、膨大なデータの中から必要なデータの抽出は難しい作業でしたが、一元管理によって効率化し、スムーズなデータ分析が可能となります。
また、データ分析基盤ではデータ収集から分析までの流れを自動で行え、かつ複数のデータを組み合わせられるため、より高度な分析が可能です。
データ分析基盤構築の基本的な流れ
データ分析基盤の構築は、主に以下のような流れで進められます。
1 目的・ゴールの確認
まずは、構築によって、「なにを達成したいのか」、「どんな課題を解消したいのか」といった目的・ゴールを明らかにします。
設定した目的・ゴールに基づいてこれ以降のステップが決まっていきます。
2 推進チームの構築
データ分析基盤の構築のためには、プロジェクトを推進するチームが必要です。推進チームは、実際の運用を考慮するために、部署や部門を横断したメンバー構成であることが重要です。
例えば、全体の指揮を執るプロジェクト・マネジャーやデータを保有する部門の担当者、実際に利用する現場の担当者、経営者などを巻き込んだチームを作れるかが大切です。特定の部署や部門のみでチームを作ってしまうと、現場での使い勝手が悪いといった事態が起こりやすくなります。
3 調査・計画
データ分析基盤の運用に必要な体制を計画し、稼働の見通しを立てるといった、調査・計画を中心とする準備作業を行います。
どのようなシステムから、どのデータを基盤内に収集するのか、導入すべきシステムはあるのか、その機能はどういうものかなどを決めていきます。
4 設計
データ分析に向けた環境設計になります。
例えば、収集したデータが、どのようにデータレイクに蓄積していくのか、どのように加工してデータウェアハウス、データマートに保管していくのか、その保管するデータの構造や運用方法といった点を決めていきます。
5 開発
設計した内容に基づき、システム・アプリケーションの開発を行います。 開発後はテストにて処理の速度、正確性の検証を行うことで、実際に基盤のデータが正常に処理されるかを確認し、基盤の最適化を図ります。
6 保守・運用
開発後は、システム・アプリケーションの保守・運用を行っていきます。利用のためのマニュアルや業務ルールなどの策定、トラブル時の対応など運用に必要な体制を構築していきましょう。
データ分析基盤構築の際のポイント
以降では、データ分析基盤構築の際に押さえておきたいポイントをご紹介します。
誰でも自由に直感的に扱えるか
構築したデータ分析基盤が、特定の社員しか利用できないモノであれば意味がありません。 誰でもデータ分析・活用ができるよう、すべてのデータにアクセスでき、データの分析を自身の業務に基づけられる環境を整えるべきです。また、直感的に利用できるUIやサポート体制も重要になります。
非構造データを扱うことができるか
昨今注目されているビッグデータの中には構造定義されていない非構造データが含まれます。この非構造データとは、メールや音声、PDFデータなどのことです。
こういった非構造データは従来、分析が困難とされていましたが、昨今では AIの発展によって分析が行可能となり、今後のデータ分析基盤構築の際には、この非構造データの分析も可能であるかを検討する必要があります。
拡張性が高いか
非構造データの分析のように、データ分析基盤に求められる要素は年々増えていくことが予想されます。扱うデータ量もたった数年で数倍になる予測もあり、データ分析基盤には、このようなデータ量の膨大化や新たな分析に対応できる拡張性が求められるでしょう。
一連の流れをサイロ化せず構築できるか
データ分析基盤の各システムをバラバラに導入した場合、社内データのサイロ化が起きてしまい、連携できずに活用しきれない可能性があります。そのため、データ分析基盤の設計から構築までを統一してできるかを確認することが重要です。
自社に適した機能や環境か
データ分析基盤が自社に適しているのかの確認も重要です。
例えば、自社に必要な機能が備わっているか、自社に適した環境であるか、現在利用しているシステムとの連携ができるかといった点が重要です。
データ分析基盤の構築に関しては、オンプレミス環境で構築するケースと、クラウド環境で構築するケースの2通りがあり、企業によって適切な環境は異なります。
主に、大企業などが自社内で開発する場合は、オンプレミス環境のみの開発や一部クラウドシステムを利用した開発を行うべきです。ただしこのような形の場合、自社の要件に合わせた柔軟かつ高セキュリティな基盤が構築できますが、準備・開発・テストの期間や、場合によっては億単位の開発費用がかかってしまいます。
一方で、自社での開発を基本的に行わず、運用もベンダーに任せられ、低コストであるのが、クラウド環境での構築です。自社に情報システム部門がない、開発する技術力や予算がないといった企業の中心に採用が進んでいます。
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