レガシーシステムから脱却!
組織における問題点と脱却する方法について解説!

2023年05月22日
現在IT市場が急成長している一方で、システム導入から長い時間が経過した「レガシーシステム」を使い続けている企業は少なくありません。レガシーシステムはシステム障害やコスト増大などの問題を招き、多大な損失をもたらす恐れがあるため、一刻も早く脱却する必要があります。本記事では、レガシーシステムにより生じる問題や、脱却のための方法を解説します。

レガシーシステムとは

レガシーシステムとは

 

レガシーシステムは、導入時期が古いため、最新のシステムに比べ時代遅れとなったシステムのことです。レガシーシステムを使い続けていると、最新の技術や仕組みに対応した拡張ができない、適切な保守を受けられないなど、柔軟性に欠けた非効率な運用となってしまいます。 また、長年の運用により、業務改善や法改正などがある度にプログラムの更新・改修を繰り返してきたため、システムが複雑化・ブラックボックス化していることも大きな問題です。  

 

  • レガシーシステム脱却が求められる理由

レガシーシステム脱却が求められる理由

 

レガシーシステム脱却と関係の深い問題として、「2025年の崖」があります。

2025年の崖とは、経済産業省が2018年に発表した「DXレポート」の中で用いられた言葉で、IT人材の不足と基幹システムの老朽化(レガシーシステム)によって、国際競争力の低下や経済の停滞が懸念される事態のことを指します。企業がデジタル技術によるビジネスモデルや組織の変革、すなわちDXを推進しなければ国際競争力が大きく低下し、2025年以降、日本全体で年間約12兆円もの損失が発生するとされる問題のことです。   この問題へ対応し競争力の低下を阻止するために残された期間は数年しかなく、関係が深いレガシーシステムからの脱却は必要性を高めています

 

実際に、今後レガシーシステムの運用を続けた場合、「2025年の崖」以外にも、どのような問題があるのでしょうか。次章では、レガシーシステムにより生じる問題をご紹介します。  

レガシーシステムにより生じる5つの問題

レガシーシステムにより生じる5つの問題  

レガシーシステムを放置し運用することで、生じる可能性の高い問題として以下5つがあります。

問題①:システム障害の発生

システム自体が老朽化していることや、データ・情報処理のスペックが不十分であることから、最新のプログラムや膨大なデータ量に対応しきれずにシステム障害が発生するリスクが高まります

 

また先述の通り、多くのレガシーシステムでは、カスタマイズやアドオン追加などの繰り返しにより、複雑化・ブラックボックス化が進んでいます。そのため、レガシーシステムの担い手だった技術者の高齢化・退職なども相まって、トラブルが発生した際の対応に時間がかかり、システム障害が長期化・深刻化する傾向があります

問題②:コストの増大

レガシーシステムを使い続けていると、システムが老朽化しているためトラブルが生じやすく、修理のコストが増大します。また、保守・運用の担い手不足という要因もあり、システムの維持管理費も高騰します。

経済産業省のDXレポートによれば、レガシーシステムを使い続けるとIT予算の9割以上を維持管理に使わなければならなくなると指摘されており、早急な対応が必要です。

 

参考:経済産業省「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(サマリー)」

問題③:多様な働き方に対応できない

レガシーシステムの処理はリモートで対応できないケースが多く、その業務のために出社する必要があります。近年では、コロナ禍を背景にテレワークが進みましたが、レガシーシステムを使い続けていると「多様な働き方の実現」という時代の要請に対応できず、人材確保にも悪影響を及ぼす可能性があります

問題④:IT人材の不足・業務の属人化

レガシーシステムは長期間運用されているため、プログラムの更新・改修が度々実施されています。事業部門ごとにシステムが構築・改修されていたり、カスタマイズが過剰になされていたりすることで、一部の人材しかシステムを扱えない属人的な状態になっていることも珍しくありません。

 

また、古いプログラミング言語で構築されていると、理解できる人材も限られます。さらに、そうした人材は高齢であることが多いため、すでに退職しているか、近いうちに退職する可能性が高く、より人材不足に陥りやすくなります。なお、先述のDXレポートによると、2025年にはIT人材が約43万人不足すると言われています。

問題⑤:ビジネス上の障害

日々新たなシステムが開発されている中、レガシーシステムは最新システムとの互換性がないことも多く、ビジネスを滞りなく進めるうえでの障壁となりますまた、互換性がないことで、クライアントが取引先を変更する可能性もあるでしょう。

 

さらに、爆発的に増大するデータを活用できず、競争力が低下する懸念があるほか、ビジネス関連の法改正に対応できないといった、コンプライアンス上の問題も生じかねません。

 

多くの企業がこのような問題に対処せずレガシーシステムの運用を続けていると、社会全体での競争力が低下すると危惧されています。そこで以下では、レガシーシステムから脱却する方法を3つご紹介します。

レガシーシステムから脱却する3つの方法

レガシーシステムから脱却する3つの方法

①:モダナイゼーション

モダナイゼーションとは、企業の情報システムで稼働しているデータやプログラムなど既存の資産を活かしながら、ソフトウェアやハードウェアなどを最新の製品や設計に置き換える方法です。
モダナイゼーションのさまざまな手法がありますが、代表的な手法として以下3つがあります。

 

● リプレイス
既存の基幹システムをそれと同等の機能を持つ新たなシステムに置き換える手法

 

● リホスト
ソフトウェアのプラグラムはそのままで、サーバーやミドルウェアなどをクラウドで構築された新システム基盤に移行する手法

 

● リライト
既存のシステムと同等のシステムを、新たなプログラミング言語によって書き換え、開発する手法

 

モダナイゼーションを行う際には、現行システムの利用状況を分析し、変えない(変えられない)部分、変えられる部分、変えなければならない部分の3つに分けることが重要ですが、手間やコストがかかる点には注意が必要です。

②:マイグレーション

既存のシステムやソフトウェア、データなどを新しい環境に移行する方法です。
システム移行を目的とする「レガシーマイグレーション」と、データの移行を目的とする「データマイグレーション」の2種類があります。
多くの場合、変換ツールを用いて、システムを構成する古いプログラム言語を自動で新たなプログラム言語へと変更するため、人手で行うよりもスピーディで正確な変換が可能です。
注意点として、マイグレーションは新システムに移行することで業務フローが変化するため、現場でのトラブルが発生しやすくなります。

③:クラウド活用

レガシーシステムは、自社が保有するハードウェア上で運用する「オンプレミス」が大半ですが、ハードが故障するとシステムが停止し、メンテナンス・修理にコストがかかる欠点があります。一方、クラウドであれば自社でハードを保有する必要がないため、保守や維持管理の費用を抑えることができ、そのための人材を確保する必要もありません。このことから、クラウド活用はレガシーシステム脱却のために必須の要素だと言えます。

 

以下記事では、オンプレミスやレガシーシステムからクラウドへ移行したいと考えている方向けに、クラウド移行のメリットやクラウド移行の手順(事前準備)について解説しております。ご興味のある方はぜひご覧ください。

 

しかし、クラウド化するうえでは課題・デメリットもあります。

レガシーシステムからクラウド化をする際のよくある障壁と解決策

障壁①:セキュリティのリスク

セキュリティのリスク

 

クラウド化するうえで、しばしば懸念されるのがセキュリティリスクです。既存のシステム再構築や新システムの導入を行うことで、レガシーシステムのセキュリティリスクが解消される一方、クラウドはオンプレミスのように独自のセキュリティが確保できないため、固有のセキュリティ対策が必要です。
対策のポイントとして、クラウドの入館申請や本人確認などはIDとパスワードで管理されるため、責任分界点がユーザーにあることを認識しておきましょう。

障壁②:社内のIT人材不足

社内のIT人材不足

 

2つ目の障壁は社内のIT人材不足です。DX推進に向けたIT人材の確保・育成はコストがかかるため、専門のベンダー企業に委託する企業が増えています。しかし、ベンダー企業に任せきりの企業が多く、想定以上に委託費が重なってしまうことで、DX推進を行うことができないケースがあります。
DX推進のためには、社内の人材採用・育成に注力すること。またベンダー企業に任せきりではなく、二人三脚の体制にて伴走していくことが重要です。

障壁③:従業員に相応の負荷がかかる

従業員に相応の負荷がかかる

 

3つ目の障壁はクラウド移行における従業員への負荷です。クラウド移行を行うことで、多方面で作業が変化します。この変化に対応するために、作業を見直し、新しい技術を覚える必要があり、従業員に負担がかかります。そのため、移行前には、全社的な取り組みとして従業員に目的やビジョンを共有し、変化の影響が少ないようスモールスタートで進めることが重要です。

障壁④:レガシーシステムの技術的負債

レガシーシステムの技術的負債

 

4つ目はレガシーシステムの技術的負債です。近年GAFA(Google・Apple・Facebook・Amazon)などの海外企業を中心に、デジタル技術を駆使した新たなビジネスモデルが展開されていますが、多くの日本企業の事業基盤は技術的にレガシー化しており、その場しのぎの対応しか行われていません。その結果、新商品やサービスが生まれにくい企業になり、よりレガシーシステムの脱却が困難になる負のサイクルが生じています。

障壁⑤:グローバル化への対応

グローバル化への対応

5つ目はグローバル化への対応です。前述のように、海外企業では新たなビジネスモデルが展開されてることや、DXを新しいサービス開発や心地よい顧客体験の創出など多様化した観点でとらえています。例として、AmazonやSpotify、Netflixなどが代表例です。日本も今後の競争力を確保するためには、海外企業にて成功しているDXの捉え方を取り入れる必要があります。

障壁⑥:クラウド化するうえでの業務上の制約

クラウド化するうえでの業務上の制約

 

6つ目はクラウド化するうえでの業務上の制約です。クラウド化を行うためには、現在のシステムを止める必要があるため、業務を行うことができなくなります。そのため、移行時期が限られてしまい、先延ばしになっている企業も少なくありません。打開策として、段階的なクラウド移行方法がありますが、対応できないベンダーもあるため、確認を行い、調整することが重要です。

Sproutlyはレガシーシステム脱却をサポートします。

Sproutlyでは2025年の崖といった課題の克服や保守・運用にかかる負担の軽減を可能とするクラウドアプリ開発とインフラ構築のサポートを行っています。クラウド選定、移行、運用、監視、管理を一気通貫して対応するため、システム基盤をオンプレミスからクラウドへ移行したいが、どうやってクラウドへ移行すればよいのかわからない企業に向けたクラウドネイティブなインテグレーションを実現することできます。

 

以下資料では、クラウド化の障壁と打開策をご紹介していますので、レガシーシステムからの脱却にご関心のある方はぜひご覧ください。

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